「The scenery of summer」(夏の風景)

scene2 『カキ氷』
柴犬さま



『ガリガリガリガリ。』


カロン


『ガリガリガリガリ。』


カロン


『ガリガリガリガリ。』


カロン





「・・・・・・。」




『ガリガリガ・・・・・・』



さくらが手を止めてこっちを見た。



「小狼くんもやってみたい?」

「いや・・・、別に・・・。」

「そ?」





『・・・カリ、』

カロン

『ガリガリガリガリ。』


さっきから、同じことを繰り返している。

氷を削る小さな容器に開いた穴に、一つずつ、透き通った氷の塊を入れては天辺についたハンドルを回す。

その度、容器の下に置いたアイスクリーム用のグラスに細かく削られた氷がぱさぱさと落ちた。

なぜかさくらは、氷の塊を一つずつしか容器に入れない。一遍にもっと沢山はいるはずだが、

氷を一つ、削っては手を止め次の氷を入れて、新しい氷が削られるのを一つずつ、見ているようだった。

既にグラスの中では最初に削られた氷が溶け始めていた。


・・・これじゃ、食べる頃には水に戻ってるんじゃないか・・・?


「小狼くんと一緒に、カキ氷が食べたい。」

そう言って、自宅からカキ氷を作る容器を持ってさくらがやって来た。

手荷物としては大きいカキ氷の容器をわざわざ持ってきたのだから、余程食べたいのかと思っていた。

なのに・・・


『ガリガリガリ・・・』


「さくら・・・。」

「なに?」

ぴた、と手を止めて、こっちを見る。

「オレにもやらせて。」

さくらの顔が、期待から喜びに変わる。

「・・・うんっ!」



カコン

『ガリガリガリガリ。』

カコン

『ガリガリガリガリ。』

カコン・・・





製氷皿の氷を全部使い果たした頃、

満足したように、さくらがイチゴとメロンのシロップを今オレが作ったばかりの2つのカキ氷に

それぞれかけた。

冷たくて甘い氷菓は素朴な味がした。

テーブルの上には、さくらが最初に作ったカキ氷が、溶けて水になっている。





                            終


  <<scene 1

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