ぬくもり3




『あったかぁい・・・』




さくらは、ぼんやりとした意識の中で目を覚ました




ぼやけた目で確認出来るのは

見覚えの無い古ぼけた木の天井


体で感じることが出来るのは

時折頬をなでる、冷たい風

そして、体を温ためる火の存在―――




『あれ?私・・・どうしたんだっけ?』


さくらは、記憶の糸を手繰り寄せるように、これまでの経緯を振り返る




『みんなと一緒にスキー教室に来て・・・知世ちゃんに言われて小狼君と頂上に行って・・・

一緒に滑ってたら吹雪に遭っちゃって・・・』




そして、はっとしたように気づく




『わたし、崖から落ちちゃったんだ!!』


さくらは完全に意識を取り戻し、体を起こした









辺りを見回してみると、ここはどうやら何かの小屋のようだ


さくらの目の前では薪が燃やされ

さくらのものと、もう一着別のスキーウェアが、側で乾かされているのが目に入る

そして薪の向かいには―――




「小狼くんっ!?」


「気がついたか・・・」


目の前には安心したような、安堵の表情を浮かべて壁に寄り掛かっている、小狼の姿があった


「よかった・・・」


穏やかな表情を見せる小狼




「小狼君が助けてくれたの!?

・・・ありがとお」


さくらはほっとしたような、嬉しそうな、そんな笑顔を浮かべた




だが、そんなさくらの表情とは逆に、小狼の表情にふと影が落ちる


「いや・・・俺がもっと早く気づいていれば、吹雪に遭う事も無かったし

さくらが崖から落ちる事も無かった。

おまけに、剣も持って来ていなかった・・・。持っていたのは、たった3枚の札だけだ・・・。

俺は、さくらを危険な目に合わせてしまった。ごめん・・・」




札の1枚は、おそらく目の前の薪を燃やすのに使ったのだろう

よく見ると、辺りに燃えカスのようなものが残っていた




自責の念に駆り立てられている、小狼の表情を見るなり

さくらは大きく頭を振る


「ううん!!そんなことないよ!?」


少し下に俯きながら話し始める


「元はと言えば、私が小狼君を誘ったんだし、崖から落ちたのだって、私がぼーっとしてたから・・・

それに、私なんか、カードを使う余裕が無かったし・・・。」


顔を上げ、真っ直ぐに小狼を見つめる


「それに、それに・・・小狼君が助けてくれなかったら、私どうなってたかわからないもん!!」


そして、ふっと笑顔を見せる


「だから・・・本当にありがとお。」




「さくら・・・」







「ねぇ小狼君。そっちに行ってもいいかなぁ?」


しばらく、燃える薪を見つめていたさくらが、ふと、そう尋ねる


「あ、ああ・・・」


その真意がわからず、小狼は自分の元へと寄って来るさくらを見つめる




さくらは、小狼の隣にちょこんと座ると、すっと小狼の肩に頭を寄せた

「小狼君、あったかぁい・・・」


少し頬を朱に染め、さくらは少し甘えたような声を出す


「な、なっ・・・」




いきなりの事に、少しうろたえ、顔を真っ赤にする小狼




だが、その心地よさに・・・、さくらの温もりに包まれると

すっと、その体をさくらに預けた









『ほえ?寝ちゃった?』


耳元で聞こえるのは、小狼の静かな寝息


『疲れちゃったんだよね・・・。

小狼君、ほんとにありがと・・・』




さくらは自分の体を、さらに小狼へと寄せた









吹雪は次第に止んでいき、空には再び青空が広がる

先程とは打って変わり、辺りは白銀の世界が広がる




知世ちゃん、みんな、心配してるかな?

早く山を降りないとね




でも、まだ起こしたくないの


もう少しこのままで




もう少しだけ




小狼君のぬくもりを


感じていたいな・・・







Fin







しょーさんの管理します、「むてきのじゅもん」
1000Hitゲットしてリクエストした小説です。

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