初雪 ・・・ 小狼side
                                       柴犬 様




『・・・今日は今年一番の冷え込みとなる模様です。続いては各地の予報をお伝えします。』

テレビのアナウンスが今日の天気予報を告げている。

小狼は冷え切ったリビングに暖房を入れる。

エアコンのリモコンをテーブルに置くと、部屋の窓から見える重たそうな灰色の空を見た。

薄いカーテンを引き寄せて、キッチンに戻る。

戸棚から今日使う茶器を選び出し、お茶をいくつか取り出して小さな皿に移す。

やかんの蓋を開けてミネラルウォーターを注ぎ込む。

トポトポ・・・と水の音がした。

「今日は寒いから、お菓子は桃まんでも蒸かそう・・・。」

そう、独り言を言ってみる。

茶器とお茶をリビングのテーブルに置いて、椅子に掛けてあった上着を手に取った。

ブツン・・・

と、テレビのスイッチを切る。

部屋の中が急にしんと静まり返った。

「外、寒そうだな。」

小狼は上着を着込むと、玄関を出た。

寒さに身を縮め込ませて上着のポケットに手を突っ込む。

表の通りまで出ると、今出てきた自分の部屋の窓を見上げた。



・・・あと数刻したら、あの静かな部屋に明るい笑い声がするんだな・・・。



明るい若葉色の瞳が微笑むのを心の中で思い浮かべる。

『小狼くん』さくらの自分を呼ぶ声を思い浮かべる。



急に暖かさを覚えて体から余分な力が抜けた。

さくらと過ごす時間を思うだけで、こんなにも暖かな気持ちになる。


ふと、額に冷たいものが触れた。

灰色の空から白いものがはらはらと降ってくる。



挿し絵
<Illustrated by Shibainu sama>



今日の一番最初の話題は、今年初めての雪・・・だな・・・。


小狼は降り始めた雪の中を、足早にさくらの待つ場所へと歩き出した。





fin




For  −Sakura side−







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