本 日 限 定 



どじったな・・・・
普段なら、あんな反則タックル、掠りもしないのに。

ソファに横になると、思わずため息がもれた。
原因は、左足首に巻かれた白い包帯。
そっと動かしてみると、ずきっと痛みが走った。
捻挫、全治二週間。

さすがの俺も、疲れがたまってたみたいだな。
思えば、ハードな週末だった。
金曜日の朝、母上からの電話で至急香港に呼び戻されて、二晩徹夜。
やっと問題を解決して、今朝の便で成田へ。
その足でサッカー部の助っ人試合・・・・
さくらの言う通り、やめときゃよかった。
「無理しないで」って言われてたのに・・・・
でも、約束を破るのは好きじゃないんだ。
家の仕事より、サッカー部の試合の方が先約だったんだから。

さくら、心配してるだろうな。
結局、あのままグランドには戻らずに、
病院から直接帰ってきてしまったから。
電話、しないとな・・・でも・・・ごめん・・・ものすごく眠いんだ・・・
さっきの痛み止めの注射のせいかな・・・ごめん・・・起きたら必ず電話するから・・・

どれくらい眠ってたんだろう。
キッチンからの物音で目が覚めた。
香ばしい匂いとともに感じる、愛しい気配・・・。

「さくら?」
「小狼くん、起きたの?」
「ああ。来てくれたのか。」
「当たり前でしょ。心配したんだよ。 痛む?」
「いや、動かさなければ大丈夫だ。」
「お腹すいてない?」
言われてみれば、今朝機内食を食べたきり、何も口にしていない。
急にお腹の虫がきゅうきゅう言いはじめた。

さくらの準備してくれた、少し早めの夕食(得意のハンバーググラタン)を食べると、
やっと人心地になる。
気がつけば、テーブルの花瓶には、コスモスが沢山生けてあって、
淡いピンクの花を揺らしてた。
「私からのお見舞いだよ。おうちの庭に咲いたの。」
コスモス・・・秋桜・・・その和名を知ってて持ってきたのかな。

「そろそろ、湿布を変えないと。
さっき小狼くんが寝てる間に、病院に電話して聞いたの。
腫れが引くまでは、四五時間置きに張り替えて下さいって。」
「そうか」
「あっ!その前に知世ちゃんからのお見舞いもあったんだ!
ちょっと待っててね。」
そう言うと、さくらは寝室へ姿を消した。
大道寺からの見舞い・・・いったいなんだ・・・嫌な予感・・・・。

予感的中・・・。
寝室から再び現れたさくらは、コスモス色のナース姿だった。
おそろいの帽子まで付いている。
「知世ちゃんがね、やっぱり看護にはこれですわぁって。 へん、かな?」
いや、へんじゃない!断じてへんじゃない!
へんじゃないから問題なんだ。
大道寺・・・どうしてこうも用意周到なんだ!
あいつ、楽しんでるな・・・完全に。

「やっぱり、着替えてくるね。」
固まってしまった俺に、さくらは不安げにうつむく。
そんな顔するなって。
「いや、いい。その、似合ってる・・・すごく。」
顔、赤いだろうな、俺。

さくらは、すっかりナースになりきって、
たどたどしい手つきで包帯を解き、
湿布をはずし、腫れた足首を見て眉をしかめる。
まるで子供のごっこ遊びみたいだが、本人はいたって真剣だ。
そのひとつひとつの仕草が可愛くて、俺はついつい頬が緩む。

「もう、むりしないでって言ったのに、こんなに腫れちゃって。
私がどんなに心配したか、わかってる?
聞いてるのっ、小狼くん!」
「はいはい」
「はい、は、一回!」
「はーい」
「のばさない!」
「はいっ」
湿布を張り替え、包帯を巻き・・・
「はい、出来たよ。最後に早く良くなるおまじない。」
そう言うと、さくらはその包帯にそっと口づけて、はにかむ。
その後で、ほころぶ笑顔。
撃沈・・・参りました。
その笑顔さえあれば、俺にはどんな見舞いも必要ない。


「看護婦さん、ほかにも痛いところがあるんですけど。」
「えっ、どこ?」
「ここ」
俺は、額を指差した。
「もう、小狼くんたら。」
そう言いながらも、さくらは笑顔でそこに唇を落とす。
「それから、ここと、ここも・・・」
頬に、唇に、ふわりふわりとおちてくる、秋桜の花びらの様なキス・・・

たまにはいいよな?
明日からは俺、またお前を護るから。
今日だけ・・・今日だけは・・・少し甘えたいんだ・・・
1日だけの、俺だけのナースに。






        【 END 】








 ぷにゅん様コメント 

ぐはっ!なんだ、これ!
小狼、甘えてます。
書いてるこっちが、かいくなるっ!

清雅さん、こんなんでいいんでしょうか?
気に入らなかったら、
とっとと削除済みアイテムにほうり込んで下さい。
ええ、もう、本当にお気遣いなく・・・





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